税理士試験の概要
(1) 目的
税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として行われます。
(2) 試験科目
試験は、会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目と税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目(所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択しなければなりません。)について行われます。
なお、税理士試験は科目合格制をとっており、受験者は一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験してもよいことになっています。
(3) 合格
合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。
合格科目が会計学に属する科目2科目及び税法に属する科目3科目の合計5科目に達したとき合格者となります。
税理士試験の日程
いよいよ税理士試験が来週に迫って来ました。
今年の日程は8月9日から8月11日の3日間で行われます。
平成28年8月9日(火)
午前9時から同11時まで 簿記論
午後0時30分から同2時30分まで 財務諸表論
午後3時30分から同5時30分まで 消費税法又は酒税法
平成28年8月10日(水)
午前9時から同11時まで 法人税法
正午から午後2時まで 相続税法
午後3時から同5時まで 所得税法
平成28年8月11日(木・祝)
午前9時から同11時まで 固定資産税
正午から午後2時まで 国税徴収法
午後3時から同5時まで 住民税又は事業税
合格発表
合格発表予定日は平成28年12月16日(金)となっています。
試験から合格発表まで4ヵ月もありますので、受験生にとっては不安な日々が4ヵ月続きます。
平成27年度(第65回)税理士試験結果
試験地別
実際に受験した人の数は38,175人で、延受験科目数が53,663科目という事は一人当たり1.4科目という事になります。
学生や受験に専念している人は複数科目の受験が可能ですが、仕事をしている方の場合はやはり1科目ずつ受験している人が多いのでしょうね。
5科目合格者が受験者数38,175人中、835人という事ですので、5科目合格するのはやはり大変ですね。
科目ごとの合格率は18.1%という事で、直近5年間で見ると18%前後で推移しているようですね。
ちなみに過去5年間の合格率でみると、一番高い年が平成24年の20.9%で、一番低い年が平成26年の16.8%でした。
表が小さくて見にくい場合は、国税庁のホームページをご覧ください。
学歴別・年齢別
受験資格の問題もあり、大卒の人が全体の75%を占めていますね。
年齢別では30歳以上の方で全体の約69%を占めていますので、この試験が長期間かかることを物語っていると思います。
41歳以上の方だけで全体の約30%を占めていますので、5科目合格への道のりは険しいですね。
年齢別の合格率をみると年齢が上がる程下がって行くのが顕著ですね。
やはり、仕事の比重が増えるにつれて勉強の時間を取れなくなってしまいますから、仕方のない結果だと思います。
逆に25歳以下の方の合格率が高いのは、試験に専念している人が多いからだと思います。
試験に専念している人と、仕事をしながらの人では、試験勉強に費やす時間に大きな差が出来てしまいますので、それが結果にも反映されていますね。
科目別
科目ごとに合格率が異なるのもこの試験の特徴です。
昨年は簿記論の合格率が最も高く18.8%で、最も低い合格率は住民税の9.6%でした。
年によって、又、科目によって合格率が異なりますので運不運にも左右される試験です。
受験者数の推移
過去5年間の受験者数の推移です。
平成27年度 38,175人
平成26年度 41,031人
平成25年度 45,337人
平成24年度 48,123人
平成23年度 49,510人
年々受験者数が減少しています。
5年前と比べると昨年は11,335人も減少しています。減少率は約23%
25歳以下の過去5年間の受験者数の推移です。
平成27年度 4,840人
平成26年度 5,547人
平成25年度 6,712人
平成24年度 7,774人
平成23年度 8,066人
5年前と比べると昨年は3,226人も減少しています。減少率は約40%
若い人で税理士試験を受験しよという人が大幅に減っています。
つまり、今後も総受験者数は減少の一途を辿ることを物語っている数字です。
なぜ税理士試験の受験者数が減少してきたのか
少子化
単純に少子化という問題もあります。人口が減ってきているので受験者数も減るのは当然です。
でも5年で40%の減少は少子化という言葉だけでは説明が出来ないと思います。
税理士業界への魅力が薄れてきた
昔は、資格を取って手に職があれば安泰という時代もありましたが、今は違います。
平成13年の税理士法改正で税理士報酬規程が撤廃されてからは、税理士業界も価格競争が激しくなってきました。
激安の顧問料を売りにする事務所が多数出現し、昔の様な高単価で契約できるお客様の数は減ってきているのも事実です。
従いまして、昔ほど儲からない業界になってしまった為、若い人にとっては魅力のある業界ではなくなってきたのも事実です。
税理士試験は合格までに早い人でも3年から5年かかり、10年以上かかる人もざらにいます。
そこまで人生を掛けて取得した資格の割には費用対効果が低いというのも原因かと思います。
税理士業界の労働環境が悪い
税理士事務所で働く人の労働環境は、事務所によっても異なりますが、低賃金・長時間労働になるケースが多いです。
昔はそれでも独立までの辛抱と考えて働く人も多かったのですが、上記の様に税理士試験に合格して独立しても簡単には仕事を取れず、収入も上がらないケースも多くなってきました。
その様な税理士業界の労働実態は、昔はあまり知る術がなかったのですが、今はネット上で色々な情報を簡単に知ることが出来ます。
その様な、実態を知った若い人が税理士業界に興味を抱かなくなってきたのも事実だと思います。
まとめ
税理士業界は確かに厳しい時代に突入していると思います。
しかし、これは税理士業界に限らず、どの様な業界でも同じだと思っています。
厳しいと言っても、確実に業績を伸ばしている税理士さんも沢山いるのも事実ですので、要は本人のやる気と能力の問題だと思います。
将来的に税理士を目指す人がどんどん少なくなってしまうのは、業界としても好ましい事ではありませんので、若い人が税理士業界を目指したいと思える様な魅力的な業界にして行かなければと思います。